「やめて―――!!!」
私は咄嗟に大声で叫び、動けなかったのが嘘のように、2人に近付いて行った。
「睦美、来るなって言ったやろ!」
「瞬さんがやられてるのを黙って見てられへん!」
歯を食いしばり、拳に力を入れて、瞬さんを見ながら言った。
「百井さん、こんな男より、僕のところにおいで」
懲りずにまだそんな寝ぼけたことをいう男を睨みつけて私は口を開いた。
「お前みたいな最低な男、誰が好きになるか!!」
と言いながら、振り上げられていた腕を思い切り蹴ると、刃物が地面へと落ち、倒れ込んだ。
「まだ、言いたいことあるの?」
見下すように言うと、男は目を丸くして震えながら、「い・・・いつもの百井さんじゃない・・・」と小さく呟いた。
「睦美は、あんたが思っているような、いつも笑顔で優しいわけじゃないで」
瞬さんは左腕を押さえながら、ゆっくりと立ち上がりながら、男を諭すように言った。
「で、でも・・・百井さんはいつも僕の所に来てくれる時は笑顔で・・・・・・」
どれだけ思い込みが激しいんだろう。
「ばっかじゃないの?そんなの患者さんみんなにしてるわよ!」
男は項垂れるように力なく壁にもたれかかっていた。
「でも・・・・・・」
まだ何か呟いていたが、瞬さんは無視をして電話を掛け始めた。
おそらく警察だ。