「睦美、ちょっと待って」
そう言うと、瞬さんは立ち上がり、尻もちをついている男の方へと足を進めた。
きっと、瞬さんが突き飛ばすが何かしたのだろう。
カツカツと静まり返った駐車場に靴の音は、瞬さんのもので、私はその大きな背中を見つめた。
瞬さんは、男の前に立つと、座り込み口を開いた。
「何か言いたいことは?」
冷たく刺さるような口調で言い放った。
「も、も、も、百井さんは渡さない!」
震えた声でそう言うと、ズボンのポケットから何かを取り出したようだったが、暗くてよく見えなかった・・・・・もしかして刃物??
「瞬さん、危ないよ!」
「大丈夫。睦美は来るなよ」
少しだけ私に顔を向けた瞬間、
「ギャ―――!!」
と言いながら、男は何かを振りかざした。
やっぱり男が持っていたものは刃物だったようだ。
瞬さんは、左腕を切りつけられたようで、押さえている。
しかし、切りつけた方の男は、それ以上動こうとはしなかった。
震えているのだろうか・・・・・・。
そして、瞬さんは、男に話しかけた。
「こんなことしても、睦美の気は引けないよ。こんな卑怯なまね、彼女は一番嫌いだからね」
そう言われると、さらに男の体は震えだし、もう一度、刃物を振り上げるのがわかった。