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「お疲れ様です」


仕事が終わると、足早に病院裏へと向かおうとしたが、奈緒の彼氏が同じ場所で待ていると聞いたので、瞬さんにメールをし、私は病院から少し離れた場所まで移動することにした。


【バス停辺りまで来てくれる?】



私と一緒に仕事が終わったメンバーは、私と逆方向に帰る子ばかりだったので、いつものバス停辺りだと、おそらく病院の職員とは会わない。



しかし、私はたった一つ誤算をしていた。



「百井さん」


あっ、徳山さんだ。



振り返ると、ニッコリ笑った徳山さんがいた。


なんでこう毎日私の帰る時間にいるの?



まるで待ち伏せをしているみたい。



・・・・・・まさか、ね。



一瞬頭によぎった言葉が、何度も頭の中で繰り返される。



「百井さん、これから食事に行きませんか?」


「ごめんなさい。私・・・用事があって・・・」



そう言った時、スマホの着信音が鳴った。


若干の危機感のようなものに襲われながらも、電話に出た。



「もしもし」


「睦美、どうしたん?車の場所わかる?」


私が電話している間、徳山さんの視線が痛い。



「うん」


私が返事をした時、彼はわざと口を開いた。


「睦美、早く行こう」



挑発的な視線でそう言うと、彼は私からスマホを奪い、電源を切ってしまった。



何・・・この人・・・。



私は、目の前の男の顔を見ながら、後ずさりしていたが、腕を掴まれていたので、意味がなかった。