「百井さんお疲れ様」
ここ1週間、日勤の日は、徳山さんに出会う。
私の仕事が終わる時間はバラバラなのに会う。
1、2回なら偶然で済まされるだろう。
でも、ここまで会うと、気味が悪いが、本人の柔かな表情や話し方で、それもなんだか薄れてしまう。
「徳山さん、こんばんは」
そして今日もいつもと同じ所まで、バスで向かう。
彼とは約10分間は大した会話はしない。
彼は、銀行で働いているらしく、いつもきっちりスーツにネクタイをしている。
仕事の話をしてくれるが、あまり興味はない。
お互いに同じバス停で降りると、反対の方向へ歩きはじめる。
彼は、この辺りに住んでいるのだと聞いたが、詳しい場所までは聞いていないし。
私が向かっている場所も教えていない。