「睦美聞いてる?」
信号待ちで止まった時、運転席から瞬さんが私の方を覗きこんだ。
「お前、なんで泣いてるの?」
慌てふためく彼の薄暗い顔を見ると、笑みが零れた。
「ってか、お前笑ってる?」
私の表情が、全く理解できないといった口ぶりで私に聞く。
私だってわからない。
さっきまで、涙が出ていたと思ったら、瞬さんの慌てる顔を見た瞬間笑えて来て・・・。
なんだかわからない。
でも、とても嬉しいことは確か。
そして言いたいこと、それは・・・・・・。
「好き」
流れてくる曲の歌詞に合わせて小さく呟いた声は、あなたに届きましたか?
「はあぁ――――??」
耳が壊れてしまうのではと思うくらいの大声で、雄叫びをあげた彼の予想以上の反応に、お腹を抱えて笑った。
「お前、何言ってるの?」
笑い続ける私に、あたふたしながら言う彼は、俺様ドクターではない。
そして、後ろから鳴らされるクラクションに「うっさいなぁ」と毒を吐くのは、きっと恥ずかしいから。
いつも何も完璧にできるのに、こんな私の言葉1つに動揺してしまったことが、恥ずかしかったんでしょ?
わかってるけど、言わないでおいてあげる。