先週、佐々木先生が休診だったために、他の先生の診察が終わった後でも、佐々木先生の診察だけ残っていた。
残っているのは、佐々木先生と、診察室にいる看護師と池内さんと私だけ。
時計を見ると、19時半を過ぎていた。
「百井さん、外来の診察終わりました」
池内さんのほっとした声を背に受け、私は片付けを始めた。
運良く、点滴の患者さんは、もう全員終わっていたので、片付けが終われば帰ることができる。
「お疲れ様です」
「お疲れ様」
「百井さん、佐々木先生って怖いだけかと思っていたんですけど、患者さんに対してはあんなに優しい声を出すんですね」
と私に近づき、小さな声で言ってきた。先生がまだ診察室にいるからだろう。そして、池内さんは嬉しそうに私の前を通り去って行った。