「全然関係ないんやけどね、ももちゃん、最近元気がないのが気になってるのよ」

「えっ?」

正直驚いた


回診中、しかも佐々木先生の回診中にそんなことを言われるなんて。



「ももちゃん、何か悩んでいるんでしょ?これは仕事のことじゃないわね。彼氏と喧嘩でもしたの?」


・・・・・・その彼氏の前でそんなこと言わないでください。


「いやぁ、北岡さん、気のせいですよ!


無理矢理テンションを上げて答えたが、きっと上手く笑えてない。


それを証拠に北岡さんにこんなことを言われた。



「どんなに想い合っていても、素直にならないとあかんよ」



優しく微笑みながら言う彼女は、まるで母親みたいな表情をしていた。



「ありがとうございます」


お礼を言うと、頭を下げた。


その後の回診でも、お互いに少しギクシャクした感じで過ごした。

『素直にならないとあかんよ』

って言われても・・・どう切り出したらいいのかな・・・。


回診が終わり、ナースステーションへ戻る廊下を歩きながら考えていた。


ナースステーションに戻ると、師長さんに呼びとめられた。


「ももちゃん、今日、外来入れるかな?木村さん、体調が悪くて早退したのよ。」

「あ、はい。大丈夫です」


「じゃぁ、よろしくね」



外来かぁ・・・・・・じゃぁ、帰り一緒に帰れるかな?ってか、話してくれるかな?あぁ、どうしよう・・・・・・。



「ももちゃん!」

「あっ、はい!」

「やっぱり、変やで。仕事中にボーっとして」



高倉主任は、心配そうに私を見ていた。
私がここに来て2年近く経つが、高倉主任はいつも私のことを気に掛けてくれていた。

いや、私だけじゃない。

みんなのことを気に掛けてくれ、SOSを出している人に一番に気付き『困ったことない?』と手を差し伸べてくれる。


「すみません」


あかん、あかん。

こんなことをしていたら、大きなミスをしてしまう。

私は、大きく息を吐いて仕事に集中した。