「やめて!」
強く抱きしめられているのを拒否するような冷たい声で呟いた。
「えっ・・・」
頭の上からは、予想外の私の拒絶の言葉に対しての驚きの声が聞こえた。
「聞こえへんかった?離してって言ってるの!」
顔を見上げ、20cm程高い男を睨みつけながら言った。
緩められた腕と共に、彼の表情はみるみるうちに悲しそうになり、一瞬私の心も痛んだが、今はそんな同情をしている場合じゃない。
「どうしたん?睦美?」
どうしたん?じゃない!!
私は部屋に入り、リビングに向かいソファに座った。
「こっちに来なさい!」
立ちつくしていた彼は、ゆっくりと自信な気にこちらへ向かい、私とは少し距離をおいて座った。
「瞬さん、今日は仕事は?」
腕を組み、隣の男をこれでもかというくらい睨みつけながら質問した。
「・・・・・・仕事は、なくなった」
気まずそうに言う彼は、私が怒っている理由に気付いたんだろうか・・・。
テレビでは、バラエティ番組の笑い声が場違いのように流れていた。
「なくなったんじゃなくて、なくしたんでしょ?」
「・・・・・・なんで知ってるん?」
「上野山さんから聞いた」
「あいつ、余計なこと言いやがって・・・」
小さな声で言っていたが、その嫌そうな表情で何を言っているのかがわかった。