「そうですか・・・お忙しいところすみません」


溜息混じりに電話を切った上野山さんは、私の前にいて、かなり元気がなかった。


「上野山さん大丈夫ですか?」


「あぁ、ももちゃん」


いつもニヤニヤしている彼だか、今日は相当苦しんでいるらしく、笑いもしない。


きっと、当直に入ってくれるドクターが見つからないのだろう。


しかも数日以内の・・・。来週は頼みの綱の瞬さんもいないから、困り果てているといったところだろうか?



「また、当直ドクターをさがしているんですか?」


「あぁ、瞬が急に来れなくなったみたいでさ」



えっ?瞬さんが?来週の当直なら出張のことは前から言ってるはずだから大丈夫なはず。



「いつですか?」


「今日なんだ」


「今日??」



私は、さっき来た瞬さんからのメールを思い出した。



【もう仕事終わった?今日、仕事がなくなったから会えるんだけど】


これって、「なくなった」じゃなくて、「なくした」んじゃないの?



「あぁ、これからまた、さがさないと・・・ももちゃん、じゃあね」



そう言うと、彼は私が向かう方とは逆の方向へ歩き始めた。



「先生、お忙しいところすみません・・・・・・」



診察も終わり、静まり返った廊下に彼の苦しそうな声が響いていた。



それより・・・あの男!!何を考えてるんよ!急に断ったりして!



さっきまでのウキウキした気持ちとは、正反対の感情に襲われていた。



私は周りも気にせず走り、息が切れる中、バスに乗り彼の部屋へと向かった。