8月上旬、いつもどうりにお店が空いた。
その日はかなり暇だ。
客の入りが悪い。
アユミママは暇にイライラしてるせいか、タバコをひっきりなしに吸ってはあっち行ったりこっち行ったり。
灰皿にタバコがうもれていた。
そわそわし、イライラしてるのが目に見えていた。
冷蔵庫からウーロン茶を取り出した瞬間、店のドアが空いた。

「いらっしゃい〜」
台所からアユミママがすぐさま出てきた。
「アユミちゃん、久しぶりだな。近藤だよ。」
オーケストラの指揮者のような面白い髪型をした紳士が、1人。
「まあ近藤さん?お久しぶりねぇ」
一目でわかった。この金持ちの漂わせる空気。
「君、バイト⁇可愛いねぇ」
セクハラでもないその言い方。
ノリのいいおじさん。
笑った歯はおじさんの癖にとっても綺麗だった。
白髪がライトに反射した。
「とりあえず、芋。熱燗で」
「こんな真夏に熱燗?」
「あんまり冷やしたくないんだ。」
熱燗とはあっつい焼酎のこと。
おじさんは笑って私から酒を受け取ると、一人で晩酌を始めた。