練習が終わり、上級生が上がった後は一年生でグラウンド整備と、球磨きをしなければいけない。今は他の部活とグラウンドを共用しているけれど、甲子園での活躍が認められ、専用グラウンド(照明もばっちり)が急ピッチで工事が行われている。今はこの狭い野球部スペースだけを整備すればいいから、それほど苦ではない。
一年生だけになった部室で着替えをしていると、同じクラスの本宮が悲鳴を上げた。
「ひっでー! 何このアザ!」
腕や肩に球の形が食い込んだアザを見て、自分でもキモい! と叫んでしまった。
「これ、イジメじゃね?」
他の一年生も交じって、俺の気持ち悪いアザを見て面白がっている。
「今だから言うけどさ、誰も桜庭さんのキャッチャーなんてやりたくないって言ってたぜ。二年生も」
確かに、自分が正捕手になんてなったら、斯くも恐ろしいイジメが待っているんじゃないかと思っていたが、そんなことはない。市川さん以外のキャッチャーは認めない、偏屈なピッチャーに嫌がらせを受けるくらいだった。
「翔、本当に大丈夫なわけ?」
「翔なら外野でも十分通用するし、スタメンにだってなれるよ」