秋季大会は、だましだましで三回戦まで進むことができたけど、即席バッテリーみたいな俺たちがそれ以上勝ち進めることはできず、度重なるエラーと四死球で大敗を期した。


「望月、自信がなさそうにサインを出すのはやめろ。点を取られたって、取り返せばいい。お前なら、それができるはずだろう」

 監督は、決して桜庭さんを責めない。責められるのは、俺だ。

「すみません…」

「桜庭も、少しは望月に歩み寄ってやれないのか。お前の球を取ってくれるのは、こいつしかいなんだから」

 自分の気に入った相手にしか、キャッチャーになってほしくないと思うなら、この先輩はとんでもないことだ。キャッチャーが俺しかいないことを、本当に分かっているのだろうか。
 桜庭さんは、チラッと俺を睨むように見ただけで何も言わなかった。



 桜庭さんは、俺にどうしてほしいとか、そんなことは何も言わない。何も言わないということは、一番酷だと思う。

 だって、それじゃあ何も変わらないのに…。


 どうすることもできず、市川さんに相談しようとしたら、桜庭さんに激しく罵られた。