自分の叫ぶ声に気づいたサイが、こっちを見る。


幻でも目にするような、驚いた表情で……





私は走り出した。


走って、走って、そして……




「サイ!!」


強く抱き着く。


溢れる涙が止まらない。


今日はもう、絶対ダメだと思ったのに……今日だけじゃない。明日も、明後日も……もしかしたら、この先一生会えないんじゃないかと思っていた。


「うおっ!?」


勢いよく抱き着いてきたから、サイの背中がベンチに当たる。


痛みは……幽霊だから感じないよね?


私は更に、抱きしめる腕に力を込めた。


もう絶対に、目の前からいなくならないように……




「ごめん……ごめんね、サイ……」


「……」


なんの温もりも一切感じない、サイの体……。