かばんから携帯を取り出してみる。
「6時、12分……」
うそ……6時間近くも、雨の中を走り回っていたの……?
足が痛くて、もう走れそうにはない。
家のほうでは、そろそろお母さんが仕事場から帰ってくる時間だ。こんな時間までずぶ濡れの格好を見つかると面倒だから、早く帰って着替えないと…。
仕方なく、今日は家に帰ることにした。
ただし……「今は」、だ。
服を着替えてお母さんに顔を見せ、夕飯を食べたらこっそり家を抜け出すつもり。また、サイを探すんだ……。
奈々子の伝えきれなかった想いを、一刻も早く伝える……だけじゃない。
私自身が、また、サイに会いたかったから……。
トボトボと、視線を地面に下げながら帰路を歩く。
両足が痛い……。靴で見えない指の部分からは血が出ているようにも感じた。
あんなにすごかった雨や風は、すっかり落ち着きを取り戻していた。
「夜は、どのあたりを探そうか……」
周りに人がいないことをいいことに、小さくつぶやく。
ちょうどそこで、あの……サイと話をした公園にさしかかったときだった。
「えっ」