「おーそーい!なにしてたの?」


教室に戻ると、翔子と愛姫が咲乃の机に集まっていた。不満を露わにした咲乃が言う。


「あれ?涙、泣いた?めっちゃ目赤くない!?」


「どうしたの!?」


「ああ……あまりにも眠かったから、顔洗ってきたんだよ」


「あはは!意味わかんないし!」


私の言葉に、かばんを肩に下げていた翔子と愛姫が声を上げて笑った。


もちろん、それは嘘。泣きすぎて目元がジンジンする。


「それよりさ、涙も早く帰る支度しなよ。翔子の彼氏が車で送ってってくれるって」


「さすが社会人の彼氏ー!」






「ごめん……私は、いいや」


かばんに筆箱と教科書をしまいこむ私に、3人の驚いたような目が向けられる。


「えっ、もしかして歩いて帰る気!?」


「まさか」


愛姫の言葉に笑う。


「お母さんが、迎えに来てくれるって」


「涙ママ、今日仕事じゃないの?」


「たまたま休み」


「そっかー」