泣き叫ぶ奈々子の肩を強く抱きしめる。


「うん……うん……」


周りから、どんな目で見られようがどうでもよかった。ただ奈々子と涙を流し、ただ奈々子のか細い肩を強く抱く。


サイが事故に遭ったと知った日、奈々子はどれだけ真実を受け止められずにいただろう…。


私にこうして吐き出すまでの数日間、どれだけひとり泣いたのだろう…。


完全に、気持ちをわかち合うのは不可能だと思っていた。だけど、今なら……


奈々子の気持ちが、痛いほど伝わってくる…。


「私……どうしたらいい?涙……」


奈々子の繊細な指が、自分の腕を強く握る。


「もう、いない人間に……どうしたら伝えきれなかった想い、伝わるのかな……」


「……」


遠くのほうで、空が光った。


窓から差し込む空気が冷たい。自然と呼吸の荒い、ふたりの吐息は白くなる。


「どうして、今さら後悔ばっかりするんだろう……。生きているうちに、もっとちゃんとすればよかった……。


いなくなってからじゃ…死んでからじゃ、何もかもが、遅いのにね…」


腕の中で、最後にそう言った奈々子の言葉が……


いつまでも、頭から離れなかった……。