『ごめんな』


哀しげな、サイの声音が……いつまでも、頭に残っていた。






意味もなく家のあちこちを探し回ってみる。


隣の空き部屋、リビング、バスルーム…


だけどやっぱり、サイはどこにもいなくて…。


嫌われたんだ。そして呆れられた…


せっかくサイは昨日、私が前に進むためのヒントをくれたのに…


それをバカな子どもみたいに拒絶したから。


「サイ…」


心の真ん中に…ぽっかりと穴が空いてる。


それはどうしたら埋まってくれるのか……今の私にはわからない。


―『サイは悪くない』


―『ごめん』


その一言一言を…どうして昨日、言うことが出来なかったのかな?


こんなに後悔するくらいなら、ちゃんと伝えればよかった…


「ははっ…バカだよね、私…」


サイの姿が見えるのは、私だけなのに…


彼の「死」の哀しみを…わかってあげられるのも私だけだった。