教室に向かう途中、羽山くんがうちのクラスの前でソワソワしているのが見えた。
「羽山くんっ!」
私は羽山くんの名前を呼ぶ。
隣で朔空くんは不機嫌そうな顔になる。
「あ……陽莉先輩!」
羽山くんは、ぱぁあと表情を明るくして、私に駆け寄ってきた。
「あの……その、僕……先輩になにかイヤなことでもしちゃいましたか?」
「え?」
あ、もしかして……今朝朔空くんが送ったメールを見て、怒ってるのかと思ったのかな?
「あぁ、あのメールは違うの!朔空くんが勝手に……」
「羽山、だっけ?お前さ、陽莉にベタベタすんなよ」
私が誤解を解こうとすると、朔空くんが羽山くんに向かってそう言った。
「ちょっと、朔空くん……」
「僕は別にベタベタしてるつもりはないです。ただ、陽莉先輩といると幸せになれるんです」
「羽山くん……」
朔空くんに向けた羽山くんの笑顔に私は少し嬉しくなる。
私と一緒にいると幸せになれるだなんて、羽山くんはなんていい子なんだ……!