私はコクリと頷き、海水浴の日のことを言おうかどうしようか悩んだ。
 約束がこれからのことならば言わなくてもいい気はするけれど、やっぱり後ろめたいのだ。
 私は小さく息を吸い込み、
「ツカサ、ごめん……。海水浴に行ったとき、唯兄も一緒だったけど、海に入るのが怖くて秋斗さんに抱っこされた……。それから、お昼食べたあと、秋斗さんとふたりきりになった。浮き輪を借りに行くだけだったのだけど、手、つないじゃった……」
 懺悔するように告げると、司は小さくため息をついた。
 もしかしたら予想されていた……?
 そろそろとツカサを見上げると、
「力の関係上、手をつながれたら翠から振り解くのが難しいのは理解してる。でも、これからはそういうのもなしで」
「……はい」
 これからどう気をつけたらいいだろうか、と考えていると、
「つないだ手ってどっち?」
「え……? こっち」
 右手を上げると、ツカサに手首を掴まれた。
 ツカサはそのまま手首を自分の口元へと持っていき、唇を押し当てる。
「つ、ツカサ?」
「消毒……」
 ツカサは右手のありとあらゆる場所にキスを施し、それだけでは足りない、とでも言うかのように手首から肘にかけてもキスをしていく。