電気ケトルをセットして、ハーブティーが入っている戸棚に手を伸ばして気づく。
戸棚を開くことはできても、ハーブティーの缶は、私の手が届く場所には置かれていないのだ。
手を伸ばしたまま爪先立ちになっていると、背後からツカサの手が伸びてきた。
「ありがとう……」
「どういたしまして」
缶を渡されてもツカサは私のそばから離れはしない。離れないどころか、再度腕に閉じ込められた。
「……暑いんじゃないの?」
「暑いけど……」
どうしたことか、さっきとは逆に歯切れ悪く答える。
「翠、秋兄のことでいくつか約束してほしいことがある」
「……約束?」
ツカサを振り返ると、真っ直ぐな目が私を見ていた。
「秋兄とふたりきりにはならないで」
その言葉に少し動揺する。海水浴へ行ったあの日、ふたりきりでいたことを言い当てられた気がして。
少しでも後ろめたい気持ちがあるということは、私はやっぱりいけないことをしていたのだろうか。
「秋兄を冷たくあしらうことができないのは仕方ないとしても、これだけは守ってほしい。秋兄の手癖の悪さはよく知っているし、翠の無防備っぷりも理解してる。だからこそ気をつけてほしい。うっかり抱きしめられたり、うっかりキスされたり、そういうのはなしにして。……もし、そういうことがあったら隠さず白状して」
戸棚を開くことはできても、ハーブティーの缶は、私の手が届く場所には置かれていないのだ。
手を伸ばしたまま爪先立ちになっていると、背後からツカサの手が伸びてきた。
「ありがとう……」
「どういたしまして」
缶を渡されてもツカサは私のそばから離れはしない。離れないどころか、再度腕に閉じ込められた。
「……暑いんじゃないの?」
「暑いけど……」
どうしたことか、さっきとは逆に歯切れ悪く答える。
「翠、秋兄のことでいくつか約束してほしいことがある」
「……約束?」
ツカサを振り返ると、真っ直ぐな目が私を見ていた。
「秋兄とふたりきりにはならないで」
その言葉に少し動揺する。海水浴へ行ったあの日、ふたりきりでいたことを言い当てられた気がして。
少しでも後ろめたい気持ちがあるということは、私はやっぱりいけないことをしていたのだろうか。
「秋兄を冷たくあしらうことができないのは仕方ないとしても、これだけは守ってほしい。秋兄の手癖の悪さはよく知っているし、翠の無防備っぷりも理解してる。だからこそ気をつけてほしい。うっかり抱きしめられたり、うっかりキスされたり、そういうのはなしにして。……もし、そういうことがあったら隠さず白状して」