二度口にするのは躊躇した。しかし、義姉さんからは無遠慮な視線を注がれ続けている。しだいに恥ずかしく思えてきて視線を逸らすと、
「ぷっ! 何を訊かれるのかと思ったらそんなことっ。全く予想してなかったわ」
 あはは、と義姉は大口を開けて笑う。
 上品には程遠いものの、裏表のない対応に少しほっとしていた。義姉さんは、きっと誰に対してもこうなのだろう。
「妊娠して得たものと失ったものかぁ……。まだどれがどうでこれがこう、とは言えないかなぁ」
 そんなふうに言うものの、現時点でわかっていることを話してくれた。
「失ったものはあると思っていた未来。得たものは楓さんとの未来。子どもがいる未来」
 漠然とした物言いではあったが、細かく話されるよりもわかりやすかった。
「あると思っていた未来っていうのは、司も知ってのとおり、私、就職が決まってたから本来なら社会人一年生になるはずだったのよ。その未来が変わった。妊娠が発覚した当時はどうしても未来が変わることを受け入れられなくて、今まで想定もしていなかった未来が確立されたことに不安がいっぱいだった。でも、今はちょっと違う」
「どういうふうに」と問うまでもなく、義姉さんは続きを話しだす。