にっこりと笑ったまま、それで、と紗良里は話を本題に戻した。

「で、体調はどう?そろそろいけそうかしら」
「……そもそも私はさ」
「今更ね。もう何年か前から決めていたことでしょう?」

ため息をつきながら答えた妖精の言葉を言葉で遮って、紗良里は笑顔で妖精の眉間を指で弾いた。
弾かれた眉間を抑えながら、妖精はなおもため息をつく。

「依頼に反対はしませんよ。濁花の絶滅を願ってるのは紗良里だけじゃないだろうし」
「そうよ。全人間の願いだわ」
「だけど、紗良里がその人柱になる必要がどこにありますか」
「発案者はそれくらいの責任を取るべきだと思うけれど?」
「調子に乗らないで欲しいですねえ。発案者は紗良里じゃなくて私。あの時まだ小学生の紗良里に、そんなことが考え付くわけがないじゃないか」
「あら、ひどいことを言うのね。でも、濁花の絶滅を提案したのは私よ。違う?」

緩やかに笑いながら小首を傾げる姿に、苦笑しながら妖精は頷いた。

「まあ、そこは違わない」
「でしょう。……その時は反対なんてしなかったのに」

それに得意げに胸を張ってみせると、今度は少しさみしげにそう呟いた。