「もちろん。・・キミにとってその題材が難しいのなら、別のを読み直して書くといいよ。『白雪姫が7人の小人に出した料理のレシピ』なんかがいいんじゃない?人気メニュー順にランキングでもつければ、余計な文章考えなくて済むよ。うん、それがいい。」



小坂がイヤミたっぷりに言っている事を、菜都は十分分かっていたがそれでもよかった。

この『放課後』という貴重な時間を、これほどまでに小坂と共に過ごせているのは自分だけだと、菜都は自負していた。

以前は、3年女子も何名も『図書部』に在籍していた。

しかし、小坂のこのような発言に泣きながら部をやめていく女子は、後を絶たなかった。

小坂に冷たくあしらわれるのがイヤで、部に入ることが出来ず、わざと帰宅時間だけ小坂と同じになるように時間を遅くに帰る女子もいまだに少なくはない。

ただ、この小坂の『隣』というポジションを確保しているのは紛れもない菜都だけであった。

それについて小坂がどう思っていようといまいと、菜都にとってはどうでもよかった。



「了解です、部長~。ランキングも書きますが、もう一度『エロスとプラトニックの天秤』のレポ書き直してきますので、もっ回見てくださいね。」



「次は僕の名前は載せないように。」



小坂は開いておいた単行本を再び手に取った。



「はいは~い。」


菜都が元気よく返事をすると、小坂がフッと単行本から目を逸らし菜都を見た。