兼『相当、紅月さんと一緒に居たいんだね。』
 
 

恋『……へ??』
 
 
 


そりゃ…、"主人"ッて事になってる…から??
 
 

実際に"猫"じゃなかったら、



離れたくて仕方ないかもしれないし…。
 
 
 
もし、離れたくて仕方ないなら…
 
 

少し…悲しい。
 
 
 


兼『紅月さん??』
 
 

恋『あ…私、店の外、掃除してきますね。』
 

 
兼『え??ああ…うん。』
 
 
 
 

 "当たり前"じゃないんだよね…。
 
 

クゥが私の近くに居るのも、
 
 

神様に"まじない"をかけられたからであって。








"まじない"を解けば
 
 

クゥは"自由"になれる。
 
 
 
 
 
恋『……………。』
 
 
 
 
 
自分が嫌になる。
 
 

"まじないを解きたくない"
 
 

そんな事を思ってはいけないのに…。
 
 
 


恋『掃除に…集中しよ…。』
 
 
 
 

一人になるのが寂しいからって
 
 

クゥを利用しちゃ駄目なんだ。
 
 

クゥは"まじない"を解きたいに決まってるんだよね…??



 
 
 
恋『お疲れ様です。』
 
 

兼『お疲れ~♪またねー!』
 
 
 






バイトが終わって、クゥと一緒に帰る。
 
 

一つだけ、やっぱり気になる事がある。
 
 
 
 
"まじない"の事。
 
 
 
 
神様は"試練"だとか言ってたけど、



自由をなくすのは、辛いんじゃないかな??
 
 

もし、
 
 

もしもクゥが"まじない"を解きたいのなら、
 
 

私は解いてあげたい。
 
 

私ばっかり、良い思いはできないから。
 
 
 
 
 
ずっと一人だったから…。
 
 
 
一人じゃないのに慣れないうちに、
 
 
 
"まじない"を解いてあげたい。
 
 
 


一人じゃないのに慣れちゃったら、
 
 
 

"まじない"は解きたくなくなっちゃうから。
 
 
 


《まじないはお主にしか解けない。》
 
 
 


神様が言ってた言葉。
 
 
 
クゥは解き方を知ってるのかな…??
 
 
 
知らなかったら今度、神様にでも聞いてみよう…。
 
 
 
 
 
 
 
 



ガチャッ…。
 
 
 
 
 
バイトから帰って来て、時計を見ると、
 
 

もう夜の九時をまわっていた。
 
 
 


恋『クゥ!今日はお疲れ。遅くなっちゃったけど、ご飯食べよっか。』
 
 
 


コクン。
 
 
 


クゥが頷いたのを見ると、キッチンへ向かい、夕食の準備をした。
 
 
 


―――トントントントン
 
 
 


部屋には、包丁で野菜を切っている音だけ。
 
 
 
後ろを見ると、クゥはソファに横になっていた。
 
 
 
 
 
 
―――ヴ-ヴ-ヴ-ヴ…。
 
 
 







夕食を作り終え、お皿に盛ろうとした時に、机の上に置いておいた携帯が鳴り出した。
 
 
 


パカッ…。
 
 
 


  ――――――――
  新着メール、1件
    神様。
  ――――――――
 
 
 


神様…??
 
 

また暇だったりしたのかな…??
 
 

 
 
 
恋『―――ッ…!!』
 
 
 


神様からのメールを読んだ時、



すごくびっくりした。
 
 
 


  ―――――――――
  呪いは、お主にしか
  解けぬ。そして、自
  分で見つけていかな
  ければならない。
 
  空夜は呪いの解き方
  を知っているが、ブ
  ロックが入っていて
  自分からは言えない
  る。
 
  一人でとは言わぬが
  やり遂げてみせよ。
 
  お主が夢見た人生が
  その先にある事を信
  じながら。
  ―――――――――
 
 







神様は…
 
 
 
何でもお見通しなんだね。
 
 
 

人にばっかりに
 
 


頼っちゃ駄目だよね。
 
 
 


恋『クゥ!できたよ!食べよ。』
 
 
 
 

頑張ってみよう。
 
 
 

始めてみよう。
 
 
 

自分にできる事から。
 
 
 


恋『クゥ、ご飯食べたら先にお風呂入ってね。』
 
 
 


コクン。
 
 
 


そういえば、
 


もう一つ気になる事があった。
 
 
 


クゥの服。
 
 
 


毎日違うけど、いつ持って来たんだろ??
 
 
 
最初会った時は、何も持ってなかったし…。








恋『ねぇクゥ??服ッてどうやって持ってきたの??』
 
 
 


そう、クゥに聞くと、キッチンにあるメモ帳にペンで書き始めた。
 
 
 


  ―――――――――
  ジジイが前に、俺の
  家にある服を全部持
  ってきやがった。
  ――――――


 
 

恋『そっ…そっか…ι』
 
 
 


神様…ι



不法侵入だよ…ι
 
 
 

駄目じゃん。
 
 
 


ご飯を食べ終わり、片付けした後に自分の部屋に戻った。
 
 

クゥはお風呂。
 
 



恋『はぁ…ッ。』
 
 
 


頭が痛い…。
 
 




 
 
 
風邪でもひいたかな…。
 
 
 
お風呂は今日はやめておこう…。
 
 
 
 
 
恋『はぁ…。』
 
 
 
 
 
ため息しかでない。
 
 
 
 
 
――――ガチャッ。
 
 
 
 
 
恋『クゥ。』
 
 
 
 
 
お風呂から上がったのか、クゥが部屋に入ってきた。
 
 
 
 
 
今、
 
 
 
聞いてみようか…。
 
 
 
 
 
恋『ねぇ…クゥ。』
 
 
 
空『????????』
 
 
 
恋『クゥは…』
 
 
 
 
 
 "まじない"解きたい??
 
 
 
 
 
恋『クゥは、"呪い"解きたい??』
 
 
 
 
 
聞いてしまった。
 
 
 
 
 
空『………………。』
 
 
 
 
 
 
 
 
恋『クゥ????』
 
 
 
 
 
クゥは携帯を取り出して、文字を打ちはじめた。
 
 
 
心臓の音が…
 
 
 
ハッキリ聞こえた。
 
 
 
 
 
カチカチカチカチ…。
 
 
 
 
 
自分自身に聞こえているのは、
 
 
 
携帯で文字を打ってる音と、
 
 
 
自分の心臓の音だけ。
 
 
 
クゥが打ち終わったのか、携帯を差し出してきた。
 
 
 
 
 
ドクン…。
 
 
 
ドクン…。
 
 
 
 
 
  ―――――――――
  解けるもんなら解き
  たい。
  ―――――――――