片手をあげると、真っ黒な闇の中…。
 
 

クゥ、神様、優、自分…。
 
 

それ以外はなにも見えない真っ黒な世界…。
 
 
 


パチンッ…
 
 
 


神様が手で音を鳴らすと、優の姿が消えた。
 
 
 


恋『!!!!!』
 
 
 


優が消えたと同時にまた、普通の玄関へと戻った。
 
 



優の姿は…ない。
 
 



神『お主!大丈夫であったか…??』
 
 



神様が突然、私に話し掛けた。
 
 



恋『あ…はい…。』
 
 
 
 

まだ、状況がうまく飲み込めない…。




恋『あの…あいつは…??』
 
 






神『弟子に任せた。弟子がまじないをかけてくれるだろう…。』
 
 

恋『そう…。』
 
 



思っては…



駄目かもしれないけど…
 


このまま帰ってこないでほしい…。
 
 

これ以上…



 近付いてこないでほしい…。
 
 
 

クゥは、まだ痛む私の頬を擦ってくれた…。
 
 

大丈夫だよッて言ったら、ホッとした顔を見せてくれた。
 
 

同じ男でも…



クゥだけは違う…。
 
 


それは…



クゥが猫だから…??
 
 

神様は前、天界から見ても



クゥは酷かったッて言ってた…。
 
 

あいつよりも…??
 
 








だったら――――
 
 
 
 

神『お主ッ!!』
 
 
 
 
恋『――――????』
 
 

神『そう思うのは分かるが、あやつよかは空夜のがよっぽどマシな方じゃ。空夜よりも酷い奴が居ったんじゃのう…。』
 
 

空『…………(怒)。』
 
 



良かった…。
 



あいつよりは大丈夫だったんだ…。
 
 

少し、ホッとした…。




神『後は二人で話し合いなさい…。』
 
 



ふいに神様がそんな事を言った。
 
 



恋『え…??』
 
 

神『先程の事で空夜も頭の中で何がなんだか分からなく動揺している。』
 
 



説明…しろって事だよね…??



でも…
 
 



神『安心しなさい。空夜には大丈夫だ。ワシが保証する。』
 
 



神様はそう言って、また金色の世界を作り出して、消えた。
 
 

神様が大丈夫ッて言うのなら大丈夫なのかな…??
 
 



うん。



大丈夫…。
 
 



話してみよう…。
 
 


私の事…。
 
 







時刻は 3:00。
 
 



恋『すっかり目が覚めちゃったね。』
 
 

空『……………。』
 
 

恋『部屋に行こうか??』
 
 



コクン…。
 
 



恋『飲み物持って行くから先に行ってて。』
 
 



クゥを先に部屋にいかせて、ゆっくりとココアをコップについだ。
 
 



何処から話してしまおうか…。
 
 

頭の整理ができない…。
 
 

飲み物を持って、部屋に上がると、ベッドの上でクゥが心配そうに私を見ていた。
 
 



恋『はい!クゥ。』
 
 



飲み物を渡して、自分もココアを飲んだ。
 
 
 


しばらくの沈黙。
 
 
 


恋『聞いてくれる…??』
 
 

空『???』
 
 

恋『私の過去…。』
 
 



まっすぐクゥを見てそう言うと、クゥはすぐに首を縦にふった。
 
 




恋『さっき家に来た奴はね…、優ッて言うの…。飯嶋 優。』
 




    . . . 
大好きだった人…。
 



そして…。
 
 



恋『私のね、元カレ…。』
 
 

空『!!!!!』
 
 

恋『昔はね、すごい優しかった人なの…。優に会いに毎日学校にも行ってた…。』
 
 



あの頃は…
 


毎日毎日すごく学校が楽しくて
 
 

休んでる時が少なかったくらい…。
 
 



恋『でもね、付き合い出して少したった時から…優は変わった。』
 
 



あの優しかった優は
 


今は欠片の一つもない…。
 
 
 
 
―――――――――――
――――――――
――――――
――――
 
 
◆高校一年、春◆
 
 
 
『大祐!連れてきたよ』
 
 
 


桜まだ満開で、私は高校に入って出来た友達と一緒に居た。
 
 

その友達は
 


香山 秋菜
 


秋菜が彼氏を見せたいと言うので、私はついて行ってた。
 
 



秋『なんだ…。優も一緒なんかぁ…。』
 
 

優『はぁ??なんだその言い方!別に良いだろうが。俺が大祐と居たってよ…。』
 
 
 



秋『別に良いけどさ…。あぁ…、テンションが一気に下がったわ…。』



優『いちいちムカつく女だな。』
 
 

大『俺の彼女なんですけど…ιそっちのコは??』
 
 
 


皆のやり取りをジッと見ていた時、秋菜の彼氏にふいに問い掛けられた。
 
 



秋『私の友達。恋歌ッて言うの。大祐に新しくできた友達を見せたくてね☆』
 
 

大『俺、春日 大祐。よろしく、恋歌ちゃん。』
 
 

恋『よろしく。』
 
 

大『ほら!お前も。あいさつ!』
 
 



大祐君は、ずいっと隣りに居た優ッて言う人を私に近付けた。
 
 



『香山 優。よろしく。』
 
 



最初は無愛想な人だった。
 




私と優が始まった時…。
 




  
 
◆五月◆
 
 

いろいろ話すようになってから四人で居るのが当たり前になって居た。
 
 

いつしか呼び捨てで呼ぶ仲にもなっていった。
 
 

たまには、私と優。秋菜と大祐で、別々に行動する時もあった。
 
 

四人で居る時も、二人一緒に居るときも、
 


私は優だけを見ていた。
 
 


そして、



 "好き"
 


ッて事に気付いていった…。
 
 
 
 

それから優に"好き"ッて伝えた…。
 
 



   初恋…。
 
 



生まれて始めて恋をして、
 


生まれて始めて告白をした。
 
 

精一杯。
 
 

そしたら優は
 
 
 
 

優『いいよ。俺も好き。』
 
 
 
 

嬉しかった。
 



伝えて良かったッて思った。
 
 
 
 
でも…
 
 

優からしたら
 
 

私はただの―――…
 
 
 
 
玩具にすぎなかった。
 
 
 
 
遊び半分…
 


 だったんだってね。
 
 
 
 
 
付き合ッてたのは…五か月。
 
 

でも
 
 

私の"恋"は、たった
 



     三か月間。
 
 
 




三か月間が一番楽しくて
 


一番幸せだったの。
 
 
 

  遊園地。
 


水族館。
 


   公園…。
 
 


秋菜達も含めて
 


Wデートしたり…。
 
 

皆でお泊まりしたりとか…。
 
 

本当に楽しかったの…。
 
 



"幸せ"ッて…



  こう言うもの
 
 
 

そう…
 
 
 
思ってたのに…。
 
 
 
 
 
 
 
恋『その子…誰??』
 
 



街で買い物をしていた時、
 


偶然見てしまったもの。
 
 
 
 
 
優が他の女の人と一緒に居る所…。
 
 
 
 
 




その人はとても綺麗な人だった。
 
 



優『彼女だけど??』
 
 
 


残酷な言葉だった。
 
 
 


恋『私…は…??』
 
 
 


恐る恐る聞いてみた。
 
 

聞かなきゃ良かったッて思った。
 
 
 
 
 
優『キープ??つうか、性欲処理道具??みないな感じ。こいつが本命。』
 
 
 
 
 
頭の中が真っ白になるって、
 


こう言う瞬間なんだね。
 
 

一緒に居たときも、
 それ以外のときも…。
 


 "愛"は…なかったんだね。