元々子ども用の部屋が二つしかなかった宇田家では、花子は夏子と相部屋になった。

「ごめんね、お父さんからなんにも聞いてなかったからさ、まだ花子ちゃんのスペース確保出来てないんだよね。敷布団はここに敷けばいいか……ああ、荷物どうしようね?」
「んー、とりあえずスーツケースにまとめておくよ。だってここは夏子姉の部屋なんだし」
「やだなあ、もう!今日からは女子部屋だよ?ちょっと待ってて、ここら辺の服はとりあえず置ける場所に心当たりがあるからさ」

着る頻度の少ない衣服を大雑把に纏めると、夏子はバチっとウインクをしてみせた。
大量の衣服を抱えながら、花子に笑いかける。

「とりあえず服はそこね。入らなかったらまた言って」

それだけ言うと、夏子は部屋の扉を閉めて行ってしまう。
花子はそれを見送ると、「うーん」と呟いて困りきった顔をした。

「だいぶ衣装も少なくしたはずなんだけどなあ……」

九割衣服が詰め込んである巨大なスーツケースを見て、更にため息をつく。

「迷惑、かけちゃうよね、本当。だめだなあ。自由って難しいよね」

誰もいない部屋にそこまで言葉を投げると、あとは黙々と作業を開始した。

ゴソゴソ。スーツケースから圧縮袋に入った衣服を取り出す。
ポン。口を開けると瞬時に空気が取り込まれて中のものが膨らむ。
パンパン。袋から出して、軽くはたいてからハンガーに掛けてクローゼットの中に仕舞う。

ゴソゴソ。ポン。パンパン。
ゴソゴソ。ポン。パンパン。
ゴソゴソ。ポン。パンパン。