夕飯を囲みながら、叶衣達は雑談混じりに『家族会議』を始めた。
自己紹介を終えると、父が一つ一つ花子に伝えていく。

「まず、学校なんだが……本当に転校でいいのか?預かっている遺産の類もあるし、お金については心配しなくていいんだぞ」
「いいのよ、おじさん。あの学校だってお母さんの趣味だから、あんまり好きじゃないの。できれば公立に通いたかったんだ」

元々いわゆるお嬢さま学校と呼ばれるところに通っていた花子だったが、本人の希望もあって転校に決まったらしい。

「叶衣と同じ高校に通ってもらうんで大丈夫かな?」
「もちろん。あたし、叶衣大好きだもの」
「んぐぁぶっ」
「汚ねえな」

飲んでいた味噌汁が噎せた夏子を一瞥すると、叶衣は少し悪戯な顔をして花子に言葉を投げた。

「姉さんも、なんだろ?」

彼女は不思議そうにこてんと首を傾げると、変わってにっこり笑った。

「もちろん夏子姉も大好き」
「夏子姉も花ちゃん大好きっ!……っていうか叶衣はこんなに可愛い子が大好きって言ってるんだから勘違いの一つもしなさいよ、まったく」
「早とちりは姉さんだっつの」
「姉さんは大好きって言われ慣れて無いんです。毎日可愛い清蘭ちゃんが言ってくれる叶衣くんと違って!分かったら姉さんに耐性をつけるためにこれから毎日大好きって言いなさい叶衣くん。プリーズラブミー」
「毎日味噌汁吹かれてちゃたまんないね」
「むうう、叶衣くん冷たい」

膨れながら夏子は花子の首に腕を回して「いいもん花ちゃんに構ってもらうもん」と拗ねるような仕草をした。
そんな『姉』を見て、花子はくすくすと肩を揺らしながら正面の『父』である叔父に笑う。

「おじさんの家族は、私の家族とは違うのに同じいろをしてるのね」
「そうか、そうか。こんなに幸せな家族はうちだけかと思ってたんだがなあ、兄さんも上手くやったわけだ」

にやりと笑う父親に、今度は家族全員に暖かな笑いが走った。