「強いって何だろうね?」

どうしようもなく情けない自分自身にウジウジしていると、目の前の女性がきょとんとした顔で私を見て言った。

「え?」
「強いって、どんなことなのかなって」
「それは……」

澪たちを負かすくらいの……。

「力のこと? だったら、私だって強くないよ」

女性はそういって得意気に袖をまくり、華奢な二の腕と白い歯を私に見せる。
それから、言葉を何か大切な物で包んだみたいに話し出した。

「力なんて、少しも強くなんかない。それに、そんな強さには限界もあるし、やったからやり返すなんていう負のループになるじゃない。けど、自分にとって大切な物だけは守りたい。失うのは簡単だけど、失くしてからじゃ遅いから。私は、そういう強さなら誰にも負けない自信がある」

彼女の言葉には、どこか重みがあって。
彼女が抱える何かや、経験した何かがそこにはある気がして。
私の胸にすっと浸透してくるみたいに入り込んできた。

失くす……。