Case 2
何があるんだろうとメニューを探したけれど、見つからない。
店内にもメニューらしき商品の表示はどこにも見当たらなかった。
コーヒーの香りに満たされているから、もしかしたらコーヒー以外はないのかもしれない。
どうしよう。
出された水だけ飲んで帰るわけにもいかないし。
実は、コーヒーの香りはとてもいい匂いと感じるのだけれど、私はコーヒーが苦手だった。
あの黒く苦い液体を美味しそうに飲んでいる大人たちが、不思議でならない。
いつだったか、砂糖とミルクをたっぷり入れてチャレンジしてみたけれど、やっぱり美味しいとは思えなかった。
キョロキョロとメニューを求めて視線を彷徨わせていると、カウンターの女性がこちらへ身を乗り出してきた。
「フレッシュジュースとココア。どっちがいい?」
友達のように気さくに話しかけてきたその表情は、さっきまで精悍だと思っていたのにとても愛らしく見えた。
なんだか不思議な人。