私たちは静かに智の返事を待つ。


優奈も静かに待つ。


しばらくすると


「いないよ」


智が優奈に
背を向けたまま答えた。


「へ、へぇ…いないんだ…」


ホッとした表情をみせる優奈。


「でもさ…」


智が優奈の方に
体を向けて言った。


「ん?」


不思議そうに智の顔を覗き込む
優奈。


智は優奈の目を見て答えた。


「気になってる人は…いる」


「え…?」


優奈の顔が曇る。


耳を澄ませ
会話の続きを待つ私たち。


「誰…?」


「えっと…」


ドクン…


ドクン…


私たちの鼓動と優奈の鼓動が
一致する。


もはや耳には時計の音しか
聞こえない。


それぐらい静か。


智がゆっくり口を開いた。


「…教えない」


「…え」


「教えな〜い♪」


そう言うと智は笑いながら
立ち上がった。


「なーに?そんな知りたいの?」


「べっ別に!」


顔を少し赤らめながら
優奈は言った。