私はバッと港先輩から降りた。


顔からは沸騰した
ヤカンのように湯気が出ている。


「ホント、大丈夫か?」


「だだ大丈夫です!」


「顔が赤いけど…」


港先輩が私の額に手をあてる。


「ぎゃ!」


「わっ!!…びびった〜…でも大丈夫そうでよかったよ」


港先輩は「じゃ」と私に
にっこり笑うと、
私たちが降りてきた階段を
上がっていく。


…行かないで…


行かな


ドンッ


「えっ」


「名前だけでもいいなよ」


葉月が私の背中を押した。


私は慌てて

「みみ…港先輩!」

と叫んでしまった。


先輩はゆっくり振り返って
「え?」と不思議そうにする。


言わなきゃ…


言わなきゃ…!!


「あっあの!私、2年2組の上野由香といいます!」


……言っちゃった…。


私の後ろで3人が
ガッツポーズをしている。


「そうなんだ…わかった♪」


先輩はそういうともう一度
「じゃ」と言い再び
階段をのぼっていった。


"はぁーっ"と息を吐く私に
3人は「やったじゃん!」と
声を揃えて言った。