しばらくの間、
私も岡野さんも、
お互いをただじっと見つめていた。


いや…正確に言うと、
目が離せなかった。


なんだか反らしては
いけないような気がしたから。


先に目を反らしたのは、
岡野さんだった。


「…上野さん、教えてあげる。私ね…2つの顔があるんだよ」


岡野さんは私を
バカにするようにそう言うと、
くすくすと笑いながら去っていった。


……やっぱりそうなんだ…


葉月が言っていたとおり、
彼女は2つの顔を
持っているようだった。


しかも……
あの言い方。


私をバカにするような言い方…。


『先輩と付き合うのは私よ!!』

って言うかのような…。


でも…それはダメ。


私だって先輩と付き合いたい。

先輩の『彼女』になりたい。


あの日…あの入学式のときから、
私はずっと先輩をみてきた。


智に告白されたこともあった。
でも…断った。


やっぱり先輩が
好きだったから。