「人が違うって…」


「もう、あそこまでいったら二重人格だね」


葉月はどこか恐れるような様子をみせた。




……話はそこで終わったんだけど…


私は授業中も朝の事について
考えていた。


授業なんか全く耳に
入っていなかった。


文字が書かれた黒板より、
ただひたすらうつむいて
ノートをとり続ける
岡野さんのほうが気になった。


葉月はそんな私を授業のあいまに
ちらちら見ているようだった。


昼休み。


私たちはいつものように
机をくっつけてお弁当を食べる。


いつものように何てことのない話で
盛り上がる私たちのところに、
祐希が近づいてきた。


「なぁなぁ」


「なによ祐希」


話をさえぎられて、
葉月は少し不機嫌になった。


「いや、大した事じゃないんだけどさ…由香、港先輩、いま校庭でサッカーしてるよ。見に行ってきたら?」


「えっうそ!!!」


ガタタッと慌てて
立ち上がる私。


と同時に、『カシャーン』と
私の箸が床に落ちる音。


「あ…」


「いいよ由香、私洗っとくから」


「ありがと葉月っ」


私の箸を拾う葉月に
お礼を言いながら、
私は校庭へと脚を走らせた。