午前6時。


ベランダから、
日差しが差し込む。


何羽もの鳥が、
ピチュピチュと可愛く鳴いている。


……朝が来た。


私はいつものように
ゆっくりと布団から体を出した。


………昨日の葉月の忠告、
しっかり頭に入れておかないとね…。


目が完全には開かないまま、
朝食を食べ、歯をみがく。


そして鞄を背負って
扉を開けようとした時


「由香?」


お母さんが起きてきた。


「…なに?」


「あんた、これ葉月ちゃんに渡して。『お母さんに渡して』って。」


「ふぅん…分かった。」


お母さんのよくわからない趣味の
ハンカチに包まれたもの。


ジャムみたい。


私はしばらく眺めると
それを鞄にしまった。


「行ってらっしゃい。」


「…行ってきます。」


久しぶりのお母さんの見送りだった。