「あの時…智が懐中電灯をちらつかせてた時さ…見たんだよね」


「何を?」


「……岡野が旅館のかげに隠れて私たちを睨んでるところ。」


「……え……」




岡野。

岡野まゆみ。


女子からも男子からも
相手にされていない、トロい人物。


だいぶ前、お弁当のときに
少し話題になったっけ…。


でも……
なんで彼女がそんな所にいたの?


偶然?ううん……
そんなことはあり得ない。


だって私たちは、
先生たちに見つかったらヤバいからって
わざわざ人通りの少ない
裏口で待ち合わせたんだから……。


だとしたら…
跡つけられてた?


「跡つけられてたのかな…」


「そうだよ。そんなに……」


「えっ?」


「あっ……」


葉月は一瞬『しまった!!』と
いうような顔をすると、
すぐに私から目をそらし、
口を閉ざしてしまった。


「『そんなに』……なに?」


「…………」


「ねぇ!!!!!」