「あと、俺達の家は斜め向かいのペンション、星の里だから。」

外灯もなく真っ暗闇の中、懐中電灯電灯でその方向を照らす。

「それじゃ、また」

そう言って懐中電灯片手に帰っていくのを見ながら

「はい、それじゃまた―!」

と、かわし家に入った。


「はぁ~お腹空いた。もうペコペコ。」

「そう思うてな、夕飯用意しといたぞ。」

わっ、うれしい。

「えっ、ありがとうございます。」

「まぁ、食事作れないと聞いたからな。」

むっ。

「簡単な料理なら作れますっ。」

そう言って箸を勧める。

もぐもぐ

「そういえば、お前の両親から話をいろいろ聞いたぞ。」

「ニートで家に居るんだから家事ぐらいはしてるのかと思ったら今はまったくやらず
親と滅多に顔を合わせないというじゃないか。」

「大丈夫か?」

「見た目は明るく振舞っているように感じるが、
心は暗い影に覆われてるようじゃな。…」

実は昔から気が合わない親と一緒に食事をするのは苦痛でしかなく、
高校生の終わりには作られたご飯を時間をずらして一人で食べる生活になっていた。
それが今も続いていた。

実家と違う、隅々まできれいな部屋を見渡し、机に並べられた美味しい和食の数々、

郷土料理。

温かみのある感じのおじいさん。

それを見て感じた春花は思わず涙がぽろぽろ止まらなくなってしまった。

「うっ…ううっ だって小さい頃から勉強の事ばかりで、精神的に疲れきってしまって...」

「それにお母さんとお父さんは何時も喧嘩ばっかりで。」

成績は小学校の頃から学年トップだった。

けど褒められるどころか

常に満点を取らないと怒られる始末。

さらにいじめられていた友達をかばっていじめられるはめに。

父の転勤がきっかけで転校できたのはよかったけど。

ひっく。。
一通り泣きながら愚痴をこぼしてしまった。

「ここに居るのは御迷惑ですか?」