若い師匠の後姿を見送った後、俯いて落ち込んでいると、頭が重くなった。

「天宮ァ、元気出すでさァ」

「藤堂さん……」

私の頭の上には藤堂さんの手が置かれていた。そしてワシャワシャと頭を押さえつける様に撫でられた。

縮む。

「総司は今まで負け無しだったから、天宮に負けたことが悔しかったんでィ。それで入隊を認めたくなかった。

しばらくして、頭が冷えれば入隊を認めてくれる筈ですぜ」

「何言ってんだ平助。総司が何と言おうと天宮を渡すつもりはねぇよ。こいつはもう俺のもんだ」

「土方さんのさっきの言葉、嘘だと思ってたんですが、マジだったんですかィ?」

「もちろんだ」

さも当然の様に言い放つ土方さん。

私も藤堂さんと同じ意見で、小姓の件はその時の方便だと思っていたのですが、真面目に言ってたんですね。

……という事は、私は土方さんの小姓になるんですか?

え~……それは嫌ですね。

扱き使われるのが目に見えてるじゃないですか。

「土方さん」

「何だ?」

「小姓の件はやっぱりお断りします」

「さっき了承したじゃねぇか」

さっきは土方さんの目が怖かったから思わず「はい」と言ったんですよ。

あの時の土方さんの目は「はいって言わねえと、唯じゃすまないからな」みたいな威圧がありましたからね。

女子に向かって、向ける目ではありません。