その瞬間、体を押され、手に持っていた木刀を奪われた。

床にお尻がつくと同時にカンッ!と木の音が耳に響く。

お尻と腰に走る鈍い痛みに耐えながら目を開けて見ると、斎藤さんの背中が見えました。

「どうして邪魔をするのさ、一君」

「総司、負けを認めろ。おまえは天宮に負けたんだ」

「っ……。僕はまだ負けてない!」

若い師匠と小競り合いをする斎藤さんが若い師匠を押し返す。

「原田、永倉、平助!総司を押さえろ!」

土方さんの号令で三人が一斉に走り出し、若い師匠の体を押さえた。

若い師匠が取り押さえられるのを確認すると、斎藤さんが私に向かって手を差し伸べました。

「すまない、咄嗟とはいえ体を押してしまった」

「いえ、おかげで助かりました。ありがとうございます」

差し出された手を掴み、立たせてもらう。若い師匠の方を見ると、すでに三人から解放され私をジッと見ていた。

「総司」

「何ですか、土方さん」

「天宮の実力は見ただろ。隊士として十分活躍できる」

「……」

若い師匠は押し黙る。

そしてポツリと呟いた。

「イヤです。僕は入隊を認めません」

「総司」

「誰が何と言おうと僕は認めませんから!」

「てめぇ、往生際が……!」

「土方さん!」

私は、師匠に向かって怒鳴り声をあげる土方さんを止めた。