「いい加減、決めさせてもらうよ」

若い師匠が独特な構えをとった。その姿が私に剣術の指南をしてくれた師匠と重なり、目が離せなくなる。

その瞬間感じました。

三段突きがくると。

「いっ、いかん!総司、やめるんだ!!」

試合を見ていた近藤さんが止めようとしますが、若い師匠の走り出した足は止まらない。

「天宮!逃げろ!」

斎藤さんの声が聞こえますが、生憎その言葉には従えません。

なぜなら、私はこの時をずっと待っていたから。

私も師匠と同じ、独特な構えから放つ三段突きの体勢に入ります。

木刀を握る手に力を込め、全神経を集中させる。

師匠は左足を前にだすのと同時に最初の一撃を放つはず。

「はぁぁ!!」

思った通り、若い師匠は左足が前にでると同時に、最初の一撃を放ちました。

私はほんの一瞬遅れて突きを繰り出し、若い師匠の攻撃を防ぐ。

防がれて体勢を崩しても放たれる二撃目は胸。

それも一回目と同じく突きを突きで防いだ。

最後の突きは喉。

私は体を捩じるようにして避け、振り向きざま全身の力を込め木刀を振り上げた。

「っ……!?」

その瞬間、土方さんとの試合で負った傷がズキッと痛む。

腕が、上がらなくなる。

でも、ここで痛みに負けたら一生後悔する。

歯を喰いしばり痛みに耐えながら全身で木刀を振るう。

私の放った渾身の一撃は、乾いた音と共に若い師匠の手から木刀を弾いた。