「おい、原田、永倉。平助がこれ以上天宮に突っかからねえよう押さえとけ」

「はいよ」

「へいへい」

原田と永倉と呼ばれたふたりが藤堂さんの襟を捕まえ、去って行きます。

お腹に傷があるのが原田さんで、無駄にガタイが良い方が永倉さんでしょうか?

師匠が、原田さんのお腹には切腹した傷があるとか言ってたから、たぶん間違いない。

すると、ひとりの温和な表情をした男性が近づいて来ました。土方さんよりも年上でしょうか?

土方さんより貫禄がある男性です。

「君がトシが言っていた天宮さんか。私の名は近藤勇だ」

この人が近藤勇。師匠が一番よく話してくれた人だ。

近藤さんは師匠にとって、兄のような存在で尊敬できる人だったとよく言っていた。

確かに優しそうな人ではあるが、人の良さそうな感じが全開で騙されやすそうな人だ。

その点だけでみれば尊敬できる人かどうか分からない。

「私の顔に何かついているか?」

「いえ。私の名前は天宮蒼蝶です。よろしくお願いします」

立ち上がり、ペコリと頭を下げると近藤さんが「うむ」と言いながら頷きました。

「トシが言った通り本当に礼儀正しいな。君の父上と母上は厳しい人だったのだろうな」

厳しいですか。別に両親は礼儀に対して、あまり厳しい人ではありませんでした。

変わりに、礼儀とかに厳しかったのは師匠です。

剣術を習う上で礼儀も大切だ言われ師匠に教え込まれました。