「桂はん、ええ飲みっぷりやね」

「綺麗な芸妓さんに注がれる酒は格別に美味いからな」

ヅラさんの一言に周りに集まっていた芸妓さんたちが「キャー!」と甲高い声を上げました。

その隣では高杉さんが我関せずと言うように一人でお酒を飲んでいます。

ですが、高杉さんに向かって熱い視線を送る芸妓さんが数名いらっしゃいますね。

……ヅラさんと高杉さん、二人の近くに女の人がいてもなんとも思わない。

モヤモヤするのは龍馬さんだけです。

「むー……」

よく分からない自分の気持ちを紛らわせるように、温かいお茶をズズズーと啜りました。

「……稔麿さん」

「なに?」

「何かお話しませんか?」

「え?どうしたの急に?」

誰かと話してこの変な気持ちを紛らわせたいんです。

どうやら私の力だけではこの気持ちを消化できないので、稔麿さんに協力してもらいます。

「ん~……、そうだな。蒼蝶はいつからここで働いてるの?」

「5日前からです。風邪でお休みしている裏方さんたちの変わりに働いています」

「だったらその裏方たちの休みが終わったら蒼蝶はここを辞めるんだ。何だか残念。ここに来ればいつでも蒼蝶に会えると思ったのに」

「でも、辞めるのはまだまだ先ですよ。その間に会いに来てください。いつでもお待ちしています」