私は畳に手をついて頭を下げた。

明里さんお願いします。私の言葉を信じてください。

私一人じゃ山南さんの未来を変えられなかった。

明里さんがいれば、山南さんの未来を変えられるかもしれないんです。

「明里さん、お願いします」

私の言葉を最後にしばらく誰も口を開きませんでした。

でも、その沈黙はやわらかな声によって破られました。

「明里ちゃん、蒼蝶ちゃんの言葉信じてみいひん?」

「千代菊はん……。そうやな、こんなに必死に頼む姿を見たら、嘘を吐いているように見えへんわ。

蒼蝶ちゃん、山南さんがどうして切腹するか教えてくれる?」

「は、はい」

私は頭を上げた後、すぐに山南さんが切腹してしまう経緯を話した。

大阪で腕を負傷し、刀が振れなくなることで、新選組で孤立してしまうこと。

そして、伊東甲子太郎が新選組に入隊することで、ますます山南さんは孤立し、孤独に耐えきれなくなった山南さんが脱走して、新選組の為に命を捧げてしまうことを話した。

「昨日、山南さんからその簪を預かった時に思ったのですが、

もしかしたら山南さんは、刀を振れない自分は、明里さんの傍に居る資格はないと思っているのかもしれません。

だから、明里さんに渡すはずだった簪を私に渡したのかもしれません」