「……信じられなかったんよ。ウチは所詮、島原の芸妓。山南さんは武士や。武士ならウチなんかよりもっと綺麗で裕福な女性と一緒になれる。

だから、どうしてウチを選んでくれたのか分からなくてな。

そう思ったら、好きやと言う言葉も、一緒になりたいって言葉も、信じられなくて断ってしまったんや。

でも、ウチは間違ってたんやな」

明里さんは愛おしそうにその簪を眺めました。

私は彼女の顔を見て、一つ決心しました。

「明里さん、山南さんの未来を変えて頂けませんか?」

「山南さんの未来を変える?どういうことや?」

明里さんと千代菊さんが互いの顔を見比べました。

「信じられないかもしれませんが、私は150年後の未来から来ました。だから山南さんの未来を知ってるんです。

このままでは山南さんは近い未来、切腹してしまいます」

私の言葉に明里さんが怪訝そうに眉を寄せました。

「山南さんが切腹やなんて嘘や。それに、あんさんが未来から来たなんて信じられへん」

「信じられないかもしれませんが本当なんです!お願いします、明里さん!山南さんの未来を私と一緒に変えてください!」