「ずいぶんと直球に聞くんやね。でもウチと山南さんに何があったかなんて、あんさんには関係ないやろ」

「確かにそうです。私には関係ありません。でも昨日山南さんからこれを渡されて、じっとしていられなかったんです」

私は山南さんから預かった扇簪を箱ごと明里さんの前に置いた。

「これは?」

「山南さんから貴方への贈り物です」

「山南さん……?」

明里さんは信じられないような表情をして、箱を手に取ると、そっと蓋を開けました。

そして中身を見た瞬間、口元を押さえて涙を流し始めました。

「っ……うっ、山南さん……」

「これ、使ってください」

懐から手拭いを差し出すと、明里さんは手拭いで涙を押さえた。

しばらく嗚咽を堪えながら泣く明里さんでしたが、山南さんと何があったのか話してくれました。

「山南さん、大阪への出張前ウチの所に来てくれたんよ。そこでな、ウチのことを好きやと言ってくれた。

ウチを身請けできる金額のお金も準備してある、だから島原を出て一緒になって欲しいと。

すごく嬉しかった。ウチも山南さんが好きやし、一緒になりたいと思っとった。

でも、ウチは断ったんや」

「どうしてです?明里さんも山南さんが好きだったんですよね?」