明里さんも元気がないことに、少し驚きました。

やっぱり、山南さんと明里さんに何かあったのかもしれない。

「明里ちゃん、ちょっとええ?」

千代菊さんが立ち止まり、一室に声を掛けると、閉じられた戸の内側から何かが動く音がしました。

そして戸が開くと、中から明里さんが出てきました。

「あんさんは……」

明里さんは私を見ると軽く目を見開きます。

どうやら明里さんは私を覚えているみたいです。

「蒼蝶ちゃんのこと覚えてるな?この子が明里ちゃんに話したいことがあるんやと」

「そうやの。とりあえず中に入ってや」

「失礼します」

部屋の中に入ると、微かに白粉や口紅などの化粧品が混ざったような匂いがしました。

女性の匂いですね。

新選組の屯所には絶対ない匂いです。

畳に座ると小皿に乗ったお菓子とお茶が出されました。

「それで、ウチに話しって?」

「新選組の総長山南敬助さんをご存知ですよね」

私の言葉に、明里さんの睫毛がピクリと跳ねる。

「ええ、知ってるで。ウチを贔屓目してくれたお客様や」

「そうでしたか。それで、私の話と言うのは、貴方と山南さんに何があったのかを知りたくて来ました」