「女将はん、この子明里ちゃんに会わせてええ?」

「「え!?」」

千代菊さんの言葉に私と女将さんは同時に声を上げました。

「でも、その方は男なんやで」

「あんな女将はん、この子本当は女の子なんよ。事情があって、男装せざるを得ない可哀そうなウチの大事な友達。

だから大目に見てくれへん?」

千代菊さんが目をウルウルと潤ませながら、女将さんにお願いしました。

すると女将さんが「しゃあないな」と言いながら溜息を吐きました。

「分かった。その子が女の子で、千代菊の友達だったらええで。ただし、千代菊がずっと傍に居ることが条件や」

「蒼蝶ちゃん、それでええ?」

「はい!ありがとうございます」

「じゃあさっそく明里ちゃんの部屋に行くで」

千代菊さんに手を引かれながら店の中に入りました。

「千代菊さん、ありがとうございました」

廊下を歩きながら私は千代菊さんのお礼を言いました。

「気にせんでええよ。蒼蝶ちゃんに会えて嬉しいからな。

それに、蒼蝶ちゃんが明里ちゃんに用があって来たって言うたとき、蒼蝶ちゃんと明里ちゃんを会わさないかんなって思ったからな」

「どうしてですか?」

「明里ちゃん、最近元気がないんよ。だから蒼蝶ちゃんならどうにかしてくれるって思ってな」