「その後、私達は作戦を立てました。紗姫様を部屋に入れることで記者達をおびき寄せ、その中に私も紛れ込んでおきます。その後私が正体を明かしたところで、部屋の外で菜月さんが各記者様の会社に電話をする。会社というものは基本的に『長いものに巻かれろ』主義なので、かん口令を破るなどという行為は会社にとっては大打撃となります。」
「…っていうことだから、多分今頃、さっきの記者さん達は相当油を絞られてると思う。」
「あ、なるほど…。」

そうは言ってみたものの、本当は半分も理解できていなかった。何せ、仕村の後半の言葉が私には響きすぎたのだ。

「会社というものは基本的に『長いものに巻かれろ』主義」…。そういうものなのだろうか?

先代の社長は、そうではなかったと胸を張って言うことができる。社員一人一人を尊重し、社員一人一人の仕事ぶりに見合ったことをする。私から見れば、百点満点の経営者だった。

だけど…その社長は、今はもういない。

また、前のような感じになっている。ドラマに使えそうな上層部の慣れ合いもそうだが、私や菜月くん、そして本店時代の先輩達に対する風当たりが強い。

…ここで、気がついた。

先代の社長は、確かに私から見れば百点満点の経営者だが、企業というものから見れば経営者失格だったのではないだろうか? 自分のやり方は、経営者として間違っているのかもしれない。そうして追い込まれた先代の社長は、自殺をするはめになってしまった…。

「どうした、紗姫?」
「あ…ううん、何でもないよ。」

父が…いや、もう「父」と呼ぶのはやめにしよう。自分の父親があんな人だなんて、思いたくない。事実なのだが、認めたくない。

現社長が…憎い。母を殺し、先代社長を殺した現社長が憎くて憎くてしょうがない。

私は、ある決心をした。

この会社の闇を、暴く。そして、敵を討つ。