「菜月さん!」
「了解!」

仕村の合図で、菜月くんが誰かに電話をする。

「何で…ここにいるって分かったんだ…?」

リポーターの一人が仕村に尋ねる。

「かん口令を敷いたのが私だからですよ。」
「何…?」

その時、リポーター達のケータイが一斉に鳴り響いた。

「はい、もしもし…。」

多くの人が一斉に同じことを言うのは、少し滑稽だった。

「はい、はい…分かりました…。」

リポーター達は同時に電話を切り、同時に顔を青ざめさせると、同時に部屋から出ていった。

「大丈夫か、紗姫?」
「大丈夫でございますか、紗姫様?」
「う、うん…。」

口がぽっかり空いたアホ面をさらしながら、私は答えた。

「えっと…どこから突っ込めばいいのか分かんないけど…とりあえず、説明できるところまで説明して?」
「では、ご説明いたします。私はマスコミにかん口令を敷きましたが、さっきの彼らはそれを無視してここに押しかけてきました。そのことを知った私は、菜月さんの電話番号を突き止め、電話をさせていただきました。」
「最初はびっくりしたけど、話を聞くうちに状況が分かってきたんだ。色々大変な目に遭ってるって聞いて、かなり心配したんだからな?」
「ゴ、ゴメン…。」

菜月くんが泣いていた理由には、これもあったらしい。