その時だった。

「いたぞ!」

階段の方で、男の人の叫び声が聞こえる。見ると…昨日私の家の前にいた取材班の人達が、ここまで来ていた。

「きゃっ!」

すぐさま私は、菜月くんを離した。こんなところを人に見られたら…とてもじゃないけど、しばらく会社に来れない。

「部屋に入れ、紗姫!」
「う、うん!」

支店長室のドアを開け、中へと滑りこむ。だが、取材班の動きは素早い。私がドアを閉めようとすると、マイクをドアに挟んできた。そしてそのまま、ドアをこじ開けて中に入って来た。

「今回の件について、何か一言お願いします!」

仕村はかん口令を敷いてくれたはずなのに…。何かが、おかしい。

「お願いします!」

私が部屋の後ろの方に下がるのと同じように、前の方に歩いてくる。部屋の広さにも限界というものがあるので、道はすぐに塞がれてしまう。

部屋に入って来た菜月くんも、さすがに取り囲まれたこの状況じゃ手に負えない。せめて二人くらいはいないと、このまま押されてジ・エンドだ。

だが…。

「やめろ!」

菜月くんの雄たけびで、部屋が静まり返る。そして…。

「紗姫様には、指一本触れさせません!」

マスクと帽子をしていたリポーターが、それを外す。そこに現れたのは…仕村だった。