過ぎ去ってからも心臓がうるさくて
震える足で必死に歩き続ける。
数十秒ほど経って、確認のために
恐る恐る後ろを振り返った。
これで何もなければ
きっとこの恐怖から
解き放たれると思ったんだ。きっと。
だけど、振り返った瞬間に
私を待っていたのは強烈な刺激臭。
「んんん!!」
そして、静かにたたずむ一人の男。
その男の持っているハンカチが
どうやら私の口と鼻を塞いでいたようで
刺激臭はそこからしているようだった。
逃げなきゃ…
助けを呼ばなきゃ‥
頭ではそうわかっているのに
徐々に増していく眠気に勝てず
そのまま意識を失った。